これがぼくの家族との出会いだった。廃校出身の輝ける猫族の王子たるぼくは新しい家族に恵まれて人生を始めたのである。ぼくの十五代前の東京に住んでいた先祖、かの夏目漱石の「吾輩は猫である」のモデルとなったあの著名な猫の正統な後継者がこのぼくなのだ。したがってぼくは先祖のように日々の人間の動きをこれから生涯、記していこうと思う。亡き母が命と引き換えに守ってくれたこの命の使い道。それは猫族と人間族の相互信頼のために日々の出来事の記録を書くことだ。
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ぼくは猫族の気持ちというものを人間たちに知らしめ、多くの猫族、そして犬族、ひいては人間族も含め多くの命を深く考えたいのである。
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新生活を始めるにあたっては同じ動物族として、さくらとアニーに礼儀を尽くすのが筋だがぼくは小さすぎてそのへんのところがよくわからなかった。それに本当の母さんと別れたばかりだし、とにかく暖かい大きな生き物にすりよりたかった。アニーとさくらは格好の相手だった。
ぼくはまずアニーにすりよった。さくらは毛がぼうぼうで動作が激しく、近づき難いものがあったのだ。その点、アニーは白黒でスレンダーで毛もぼうぼうではない。それに目が不自由らしく動作がゆったりしている。
僕は寝そべるアニーのお腹の中に潜ろうとした。そしたら驚いたことに、素早く顎で弾き飛ばされた。大きな声でニャンと叫んだら、男子がやってきてアニー、だめだよ、こんなに小さいんだからと言ってくれた。しかしアニーはフンっとためいきをついてまた寝そべった。
そこで今度はこわごわとさくらに近づいた。するとさくらはむくっ
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